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Teamプロジェクトチーム
甲賀市役所建替え事業
プロジェクトチーム
甲賀の歴史と風土に調和し、端正で開放感あふれる「四方正面」の庁舎を表現
忍者で有名な甲賀市の中央に位置する甲賀市役所の建替えプロジェクト。築後48年を迎え、大規模地震対策の面からも建替えが必要とされた新庁舎には、忍者や宿場町、城下町といった甲賀市の文化や地域の特色を取り入れ、和の要素を取り入れたデザインを導入。ワークショップを通じて市民の意見も積極的に取り入れるなど、誰からも愛され、誇りとなるような庁舎づくりを目指した。
- 竣工
2018年1月 - 所在地
甲賀市水口町水口 - 用途
市庁舎 - 規模
延床面積16,884㎡ 6階建 - 構造
鉄骨造 - プロジェクト期間
2013年~2017年
甲賀市役所建替え事業
プロジェクトチーム
甲賀の歴史と風土に調和し、端正で開放感あふれる
「四方正面」の庁舎を表現
Team Member
難波 壮一
1989年入社
ワークプレイスドメイン
ドメインリーダー
プロジェクト責任者
池内 一史
2005年入社
副主幹
意匠設計
豊田 亜貴子
2013年入社
電気設備
松浦 厚
2006年入社
主任
構造設計
Interview
周囲に開けた立地をデザインに生かす
4年半前にプロポーザルで選定されました。基本デザインを構築する際に、現地に何度も足を運びましたが、周囲に開けた立地で、どの方角にも顔を向けているという環境から、4つの面をすべて正面とする「四方正面」というコンセプトの外観づくりを提案しました。この開放感が市民と庁舎を繋ぐ「開かれた庁舎」の実現に結びついたと考えています。
お客様から「甲賀の文化・特徴となる『忍者』を全面的にアピールしていこう」というリクエストをいただき、庁舎内の様々な部分に手裏剣やまきびしなど、忍者のモチーフを盛り込みました。また宿場町や城下町といった歴史性も併せ持っていることから、落ち着いたモノトーンの色調で全体を表現し、和の軒先をイメージした庇を設けるなど、甲賀らしさを表現しました。
新庁舎のデザインコンセプトを照明にも踏襲し、細部にわたり力を入れました。玄関から内部のいたるところに手裏剣やまきびしをモチーフにした特注照明を盛り込み、甲賀らしいユニークで親しみやすい空間づくりを目指しました。また外部にもれる光と庇の影とのバランスを程よく調整して、できるだけシンプルに落ち着いて見える照明プランを心掛けました。
大規模な地震の対策として、揺れを吸収する「免震」を提案しました。新庁舎は防災拠点としても位置付けられていることから、災害時にも庁舎機能を維持できるエコBCP(事業継続計画)庁舎を採用しました。また外壁や間仕切り壁の損傷を防ぐため、建物の外周部に耐震間柱を配置しています。耐震性能以外にも、防災拠点として確実に安全・安心を維持できるよう、非常用発電機の設置、給排水対策など、バックアップ機能も充実させています。
もちろん環境にも十分に配慮しており、西面の開口部には日射を抑制する縦ルーバーを配置し、太陽光・地中熱・雨水などの自然エネルギー利用も行っています。CASBEEはSランクで環境性能の高い庁舎と言えます。
市民も積極的に参加、市の顔となる庁舎をみんなでつくる
設計にあたっては、市民が親しみやすく、利用しやすい庁舎を追求するために、市民参加によるワークショップを開催しました。1回目では「新庁舎全体の雰囲気・イメージを考えよう」、2回目は「施設配置や市民交流スペースを考えよう」、3回目は「パブリックスペースや施設機能などについて考えよう」をテーマに、幅広い年齢層の方が参加し、活発な意見をいただきました。また子ども議会議員ワークショップや障がい者団体の方との意見交換会を行い、皆さんの新庁舎に対する期待がひしひしと感じられる素敵な時間を共有することができました。
ワークショップでは「わかりやすい」や「つかいやすい」など、機能面に関する身近な意見が多く発言されました。小学5年生から中学生が参加した「子ども議会議員ワークショップ」では、庁舎の屋上に雨水を溜めてウォータースライダーを設置するアイデアや、職員がみんな色とりどりの忍者の恰好で市民を迎える案など斬新な意見も飛び交い、とても有意義なワークショップとなりました。
「こだわり」を苦労ではなく、楽しさに
お客様から一番評判がよかったのは「わかりやすさ」という部分。巨大なワンルームの中央に来庁者にわかりやすい動線を確保し、議論と検証を重ねたサインを配置したことで、「つかいやすさ」に結び付きました。それと白と黒のモノトーンの色調。忍者と城下町を彷彿させると好評をいただきました。
甲賀市は狸の置物で有名な信楽焼も自慢のひとつで、1階の外壁に信楽焼タイルを使用しています。議場の議長背面壁にも特注の信楽焼タイルを用いていますが、信楽の工房をいくつも訪ね、大判で黒を美しく出せる技術の高い職人を見つけて作っていただきました。
狸ということでは、エントランスホールのトップライトのまぶしさ防止のためにフィルムを貼り、手裏剣のデザインを散りばめていますが、実はわからないように狸の絵柄も盛り込んでいます。職員の方が「狸をさがせ!」と市の広報で取り上げてくださり、楽しんでもらっています。
議場の壁面照明では、スタジオで原寸のモックアップを8パターンくらいつくり、どれくらいの光をどの角度であてると影がきれいにみえるかなど細部にわたって検討し、現場でもみっちりと2日間、時間をかけて調整するなど、最適な器具と角度にこだわりました。
新庁舎は甲賀らしさを表現する外観づくりに難題が多く苦労しました。一番は庇。最上階の庇は鉄板を出し、アクセントをつけるデザインになっています。和の軒先イメージに合う構造とするために、庇のディテールについて意匠担当と何度も打合せを行いました。
玄関の庇についても構造に無理をきいてもらいました。デザイン上どうしても上から吊りたくはなく、支える形でよりシャープにしたかった。それに、照明の味付けを豊田さんがした。いいチームワークが発揮できたんじゃないかと思います。
良いコミュニケーションは、お互いを尊重し合うこと
このプロジェクトは、とにかく甲賀市の方が前向きな人ばかりで、我々の提案を尊重してくださりました。否定的なことは誰も言わなかったですね。特に私は現場に常駐していたのですが、毎日打ち合わせに時間をかけ、お客様と二人三脚でつくりあげたという実感の強いプロジェクトとなりました。市長からは「甲賀市らしい庁舎にしていただきありがとう」と感謝の言葉をいただきました。
チーム内で考え方の統一が図れたことも大きかったです。電気としては、照明で例えるならば明るさなどの機能を最優先とするため、意匠の部分は二の次になりがちですが、意匠担当のデザインへの強い思いを受け、それに応えたいと…。夜間、市庁舎の外観を見て「きれい」と素直に感じることができました。
プロジェクトが滞りなく完了した背景には、このチームのコミュニケーションの良さもあったと思います。関西支社はワンルームの中に建築、構造、電気、機械の担当者席をばらばらに配置しているので、すぐ声がかけられる、すぐに相談ができるという環境にあり、それぞれがスピーディーに対応できたということがいい結果につながったと思っています。